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密会
第5章 🌹August-2🌹
そして待ち合わせ時刻の15分前。
日比谷教頭から着信があってすぐに、貴重品等を入れた紺色のスクールバッグを手に取った私は、自宅マンションを出ると、マンション裏の駐車場に小走りで向かった。
駐車場入り口付近に停められた目立つ黒塗りのベンツを見つけ、早足で近づくと運転席の窓ガラスが開かれる。
「乗れ。」と一言、私に言い放った彼の高圧的な口調は夢と全く同じだ。
頬が緩みそうになるのを引き締めて、助手席に乗り込むと、エンジン音を立てて発車する。
...なんか日比谷教頭、機嫌が良い?
彼のポーカーフェイスに見慣れていなければ決して分からない、ごく僅かな表情の違いを何となく感じ取った。
「...私の顔に何か?」
日比谷教頭が運転する様を無意識のうちに見つめていた私に、彼はチラリと流し目を送ってくる。
「いえ...その...何でもありません。」
もしかしたら本命の恋人と昨夜、お楽しみだったのかもしれない。
見当違いかもしれないが、彼が上機嫌な理由を問い詰める事は何となく避けたくて、咄嗟に顔を逸らした私は、チェック柄のスカートの裾をギュッと握り締めた。