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性神がこの世に放った獣たち~起
第1章 告白
 私と妻に起こった事を、私の中に収めておくことはもうできない。だからと言って、その悲惨な事件を誰かに話すことも私にはできない。時間を巻き戻すことができるなら、私は全財産を失っても構わない。記憶を消す消しゴムがあるのなら、私は無一文になる覚悟がある。

 そう言えばあの時、私は妻から意気地なしと罵られた。勇気がなく何もできない無能だと、強く妻から叱責された。妻に返す言葉などない。残念ながら、私は妻の言葉を受け入れるしかないのだ。あの時、私が何もしなかった? あるいはできなかった? のは紛れのない事実なのだから。私は勇気がなく無能で意気地のない男なのだ。
 私と妻の記憶の中に棲みつく忌まわしい出来事に、私のすべてが乗っ取られた。消すことができないあの時の声、そして叫び。精密な脳のメカニズムが、あの時の映像を私に送り続ける。手で耳を塞いでも、目をしっかり閉じても、おぞましい光景は私の中から出て行かない。
 秘密は私と妻で永遠に共有する。大きな壺に秘密を閉じ込め蓋をし、漏れないようにその蓋を私と妻でずっと閉じておかなければならない。終わりのない二人の共同作業。この共同作業こそが、唯一私と妻を結ぶ脆くて細い糸なのだ。たるませてはいけない。かと言ってぴんと張ってもまずい。

 これは、いわば私の備忘録のようなものだ。話すことはできないのに、書き記すことはできるのか? そこに矛盾はないのか? 断言しよう「ない」とね。なぜなら、そもそもこの備忘録が発表されることなどないし、よって誰かがこれを読むなどと言う心配は一切ないからだ。私の備忘録は、私と妻だけのものなのだ。唯一読むことが許されるのは私の妻だけである。できることなら、いつかこの備忘録を妻に読んでもらいたい。私の心がどう動いたかを知ってもらいたい。妻から責められても構わない。自己弁護だと言われても、私はそれを否定しない。そして詰られることにはもう慣れた。

 あの時の私の気持ち。妻の気持ち? あの事件を私と妻はどう乗り越えたのか? または乗り越えられなかったのか? 私と妻の関係はどう変わっていったのか? それとも変わることなどなかったのか? 私は正直にここに記していく。
  
 私は妻を愛している。悲しいかな惨劇の後になって、私はそのことに気付いた。
 もう一度言おう「私は妻を愛している」と。

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