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碧い雨の夜に…
第3章 【必然的に……】
「うおぉい!どうした!?」って私も言ってみる。
「うるせーわ」と照れてるアキラが影でめちゃくちゃ努力してることも知ってるし、誰より私を見てきてくれたことも知っている。
「うん、それは私も同じだよ、アキラのことは腐れ縁だって言い続けてるけど本当は一人のダンサーとして尊敬してるし、出来ればこれからも一緒に踊りたいなって思ってるよ」
「出来れば、じゃねぇんだよ、絶対な?言い切ったかんな?男にも女にも二言はねぇぞ?」
「ふぁい」
両方の頬をムニッと抓まれたから変な返事になった。
この、上目遣いがダメなんだってわかってるけどこれは不可抗力だよ。
俯いてアキラの手から逃れる。
そしたら手を引いて正面から抱き締められて。
「ちょっ……アキラ…っ」
「同士だから………友情としての証だから………もう少しだけ、このまま」
押しのけようとした手を下げた。
まだ誰も来ていないスタジオで、アキラの鼓動だけが耳に届いていた。
「ちょっとだけだからね?」なんて忠告して許容してしまう。
早く誰か来て………物音立てて。
じゃないとアキラが暴走しちゃうんじゃないかって結局は自分のことばかり考えてる女なんだけどな。
いい加減目を覚まして欲しい。
「はい、ありがと」ってアキラから離れてくれた。
何事もなかったかのように振る舞い始める。
きっとアキラの中で一呼吸置いて気持ちを落ち着かせたんだろう。
有り難いほどに想われてるってコレは気付いちゃうよね。
でもダンスに響くことは絶対にしない。
これは2人にとって暗黙のルール。
だから私も気持ちを受け取った上で優しくお断りするしかないのかも。
やんわり、且つハッキリと。
ずっと「ごめん」って言ってる気がする。
もうそれすらヤメテと言われた今、期待させるようなことだけはしないぞ、と思う。
「あんたら本当仲良いねー!」
ゾロゾロと仲間のダンサーたちがスタジオ入りしてきた。
2人で合わせて踊っているところをリズムに乗りながら見てくれている。
キマった時はテンションMAXに歓声をあげてくれるのも有り難い。
「完成したんだ?うわ、格好良い!」
もう皆が口ずさむほど楽曲が流れていてプロだからすぐ振り付け覚えちゃう。