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ある冬の日の病室
第3章 柔らかな手
 里奈は無言で人差し指を口に当てた。それから僕にこう質問した。
「翔君はいつマスターベーションを始めたの?」
「……」
 僕は心臓が飛び出るくらいに驚いた。もちろん言葉なんてスムーズに出るわけがない。
「御免なさい、変なこと訊いちゃったわね」
「そんなことないです。……多分中学生の時からだと思います。でも正確には中一の時なのか、それとも中三の時なのかはわかりません」
 僕が答えなければ、里奈に気まずい思いをさせる。女にもてない僕でもそれくらいのことはわかる。
「ありがとう。……翔君、もう少し訊いてもいい?」
「ん? ……ええ」
 里奈の次の質問はおおよそ見当がつく。男の本性をさらけ出すようで恥ずかしかったが、それを期待している自分もまた僕の中にいる。
「翔君は何を想像してマスターベーションするの?」
「好きな女の子。それから教育実習に来ていた女の先生。もちろん隠れて見たアダルトビデオ。後は……」
「ふふふ」
「御免なさい」
 なぜか僕は里奈に謝った。
「今もしている?」
「……」
 無言で僕は頷いた。
「答えたくなかったら答えなくていいんだけど、ひょっとして翔君は童貞?」
「……」
 里奈に嘘は言えない、僕はもう一回頷いた。
「今は何を想像するの? アダルトビデオだったらどんなのを見るの?」
「……ええと、やっぱ気になる女の子かな。AVは特に……決まったものはないけど」
 僕は巨乳好きだ。だからアダルトビデオも爆乳のシリーズを好んでみている。ただそれは里奈には言えなかった。里奈は巨乳ではない。
「ふふふ、じゃあ今は誰のことを想像しているの?」
(あなたです)
 僕の本心だが、それは口に出せない。言葉が出てこない。
 その時だった。里奈が布団の中に右手を入れてきたのだ。右手は寄り道することなく僕のペニスに向かっていた。
「あっ、もう大きくなっている」
「すいません」
 僕は謝った。里奈の手は僕のペニスの大きさや形、それに硬さを確かめるように僕のパンツの上を摩っている。
「翔君は身長は?」
「百八十二㎝です」
 僕はもう射精しそうになっていた。気を紛らわさないと直ぐに出てしまう。だから里奈のこういう質問はありがたい。
「だからおちんちんも長くて太いのか」
「……」
 身長とペニスの大きさの因果関係などわかるわけがない。でもそんなことを考えないとまじで出る。

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