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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第44章 梨果の朝帰り
その時ちょうど携帯電話に着信が入った。表示を見ると梨果だった。

「もしもし梨果!?」

『もしもし…おじさん、連絡遅くなってごめんなさい。』

「今はどこにいるんだい?」

『実家…。』

実家とは言わずもがな梨果の父親である講師の自宅だろう。

「実家で何を?」

『ヌードモデル…。絶賛開催中でいま全裸で電話してる私です、ははは…。』

会話に不穏な空気が流れてきたので妻と友也のいる居間を出て話す。

「先生は今そこにいるの?」

『今はトイレかな?席外してていない。』

「…大丈夫なのかい?」

『大丈夫だよ。多分…。』

「今すぐ行く。」

『ううん平気だってば。…ただ。』

「ただ?」

『もしもの事があったら…手でしてあげてもいい?』

梨果が言いたいことは父親が以前のように欲情し襲ってきた際に“手で射精させてその場をしのぐ”ということだろう。しかし梨果の手を父親とはいえ別の男の性器に触れて穢すのは許せなかった。

「…なるべく避けられないかな。」

『うん…。まぁ本当にお父さんが我慢できなくなるかわからないけどね。』

「迎えに行くからすぐに帰ってき…。」

『あ!ゴメン、お父さん戻ってきたかも。通話切るね。』

ツー、ツー、ツー…

通信が切れた。

「ちょっと出てくる。」

居間にいる妻と友也にそう告げると梨果の自転車を借りて急いで講師宅へ向かった。

講師の自宅に着きインターホンを鳴らす。しかし壊れているのかいくらボタンを押しても鳴っている様子がなかった。

ドンドンドン

玄関の扉を叩く。

「すみませーん!」

ワンワンワンワン!!

隣の家の犬が吠えだした。夜も更けているのでこれ以上大声を出すわけにはいかない。しかしいくら戸を叩いても家の中から人が出てくる様子はなかった。おそらく梨果と父親がいる三階のアトリエまで音が届かないのだろう。
梨果の携帯電話にも何度もかけてみたが電源が切れているらしくその旨のアナウンスが流れるだけだった。
近所の住民に通報される前に撤退するほかなかった。


結局、この日梨果が帰ることはなかった。



翌日早朝、食事の準備をしていると梨果が帰ってきた。

「……。」

「…実家に泊まっちゃった。携帯の充電が切れて連絡できなくてごめんなさい。」

「梨果!!どれだけ心配したと思っているんだ!」
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