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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第52章 あぶな絵の少女
「なんと可愛らしい。うちで舞妓としてやってみない?きっと引く手数多になるわ。」

「いやいや、そんな。」

「ふふ、まぁおかけになって。何をお召し上がりになります?」

「とりあえずビールを。梨果は?」

「じゃあ私も。」

「こらこら。」

「…お茶でお願いします。」

襖を開けて松乃が仲居に注文を告げてくれる。

「ふふふっ、面白いお嬢さんですね。…そうかなるほど、この方が作中の登場人物の…。」

「お読みいただいたのですね。この子に一緒に授賞式に出てもらおうと思いまして。」

「それで晴れ着をご所望なのですね。」

「ええ、そうなんです。」

「ええっ!やっぱり私が出るの?」

「ああ、改めてお願いできるかな?」

「えっ、どうしよう。なんか大変なことになった気がする…。」

「ふふ、一条院先生はまた何かお企みな御様子ですね。それでしたら大舞台に負けないような装いでいきましょう。間もなくいらっしゃる頃ですわ。」

ちょうど仲居から声がかかる。

「失礼いたします。お約束のお連れ様がいらっしゃいましたのでお通しします。」

「どうぞ。」

「どうもどうも、遅くなりまして。」

70歳前後の男性が通され松乃の隣の下座に座る。

「一条院先生、紹介しますわ。この方は四条河原町で呉服店をされてる七代目鈴善さんですの。」

松乃が紹介してくれる。

「はじめまして。」

「こちら、直川賞作家でこの度古川賞を受賞されることになった一条院巴先生です。」

「存じ上げております。この度はおめでとうございます。そちらのお嬢様のお着物をお求めですね。これはこれはまたなんと可愛らしい。」

しみじみと梨果を眺める呉服屋。

「鈴善さんは江戸時代から京で商いをなさっている老舗呉服店さんどす。この方にご相談されれば間違いないかと今日は一条院先生にご紹介させていただきました。」

「急な申し出なのにありがとうございます。早速で申し訳ないのですが鈴善さん、明日にでも彼女に合う着物の見立てをお願いできますでしょうか。」

「もちろんです。松乃姐さんのご紹介ですから特別室をご用意してお待ちしております。…しかし松乃姐さん、こちらのお嬢様はここ祇園の花街でも通用する器量ですなあ…。」

「ええ、私もお会いした瞬間そう思いましたわ。」

「あははは…。」

苦笑いする梨果。絶対よくわかってない。
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