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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第55章 古川賞授賞式
小一時間経った頃に仏間から梨果が出てきた。

「うひょ~…梨果さん綺麗…。なるほど、派手さよりも華やかさ。派手な着物を目立たせるのではなくて梨果さん自身を引き立てる着物ということか…。」

「さすが先生の息子さんや、賢おすな。着物が綺麗と言われるのではあらしまへん。着ているその人を美しく見せるのが正しい着物の選び方どす。」

息をのむとはこのことだ。京都で試着した姿は見ていたが、髪を結って化粧もされているので一段と見違える美しさだった。この昭和建築の暗い居間がパッと明るく華やぐ。

「梨果…。綺麗だよ。」

「ありがと、おじさん。」

「わたしも長年大勢の舞妓はんを見てきましたけどほんに可愛らしい娘はんはそうそうおらしまへん。」

松乃の言葉に頷く髪結いさん。

ピンポーン♪

『ごめんください。お迎えにあがりました。』

「はいはーい。」

友也が対応してくれる。

「父さん、お迎えが来たよ。」

「観音様かね?」

「違うよ!」

「ははは、じゃあ梨果、行こうか。」

「はい。」

「わたしたちも後から参りますね。」

3人に見送られ、私と梨果は出版社が用意してくれたハイヤーに乗って都心の授賞式会場へと向かった。


「クスクス…。」

「さっきから何をクスクス笑ってるのよ?」

「だって、おじさんの紋付き姿が可笑しくって。」

「そ、そうかい?」

「七五三みたい!あはははー!あーっははははは!!」

本音を吐露したら堪えきれずに爆笑する梨果。

「笑いすぎだよ。確かによく“とっちゃん坊や”とか言われてたけど…。」
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