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第63章 美幸との再会

「と、と、とりあえず上がってよ。」

そう言い友也がスリッパを用意する。

「いえ、友也くん私はここで…。」

「いいから上がって。せっかく来てくれたのに。」

「そうだよ美幸ちゃん、上がって。」

梨果と友也が居間へ通す。

「ごめんなさい！！そしてありがとうございます！！」

居間に入るなり美幸が畳に正座して深々と頭を下げる。

「この間は梨果ちゃんに会ったのに現場なのもあってきちんと言えなくて。本当はずっとずっとお礼が言いたかった。」

「なんのこと？」

梨果はキョトンとしている。

「河海塾の社長と一悶着あったでしょ？危ない目に逢わなかった？」

「あぁ、あれね。ヤバかったけど面白かったよ。ね、おじさん。」

「いや、面白くはないでしょ…。」

「あー、あの河海塾本社で裸で駆け回ったって騒動ね。あれは大騒ぎだったね。母さんまで出張ったから。」

「CMの時も私は梨果ちゃんを裏切ったのに…。」

「あれは気にしてないって言ったじゃん。どう考えても美幸ちゃんが主役をやるべきだったよ。現に“環七先生”のスポンサーなんだから結果的に自然な流れにもなったじゃん。」

「そうだよ、梨果さんのヘタクソな演技じゃあのCMは成り立たないよ。」

「友也くんうっさい！」

「そして、おじさま…。酒井さんに聞きました。」

「え？おじさん酒井さんって…。」

「なんのこと？誰だっけ？」

「……ありがとうございます。」

再び畳に頭が着きそうなほど頭を下げる美幸。長い黒髪が垂れ下がる。

「おじさん！ほら酒井さんってあの秘書の！」

「え？…あの？えっと…忘れたなぁ。」

「正直驚きました……。おじさまは一体…何者なのでs……。」

「美幸さん！」

急に友也が叫ぶ。

「ど、どうしたの？友也くん…。」

「もし良ければ夕飯食べていきなよ。ね、父さん。」

「あ、ああ…。あ、でも食材が…。」

「あー！買ってくるよ！梨果さん買い物付き合って！」

「えっ？私が友也くんと買い物なの？！ちょ、友也くん引っ張らないでよ！」

友也が無理やり梨果を買い物に付き合わせて行ってしまった。

「…ああ、行ってしまいました。私は早々に失礼するつもりなのですが。」

「み、美幸さんは何か予定あるのですか？」

「今日はオフなので予定はありませんがさすがにこれ以上お邪魔する訳には…。」