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第64章 梨果と男子小学生①

7月も中旬を過ぎ、梅雨もすっかり明けて暑い日々が続いていた。

ガラガラガラ

「ただいまー。」

夕方台所で夕飯の下拵えをしていると梨果が学校から帰ってきた。

「おかえり。」

「はぁ…。」

「どうしたの？ため息なんか梨果にしては珍しい。」

「車で送り迎えはありがたいんだけど帰りに寄り道したり友達と遊んだりできないのがねー。」

「ああ…。」

マネジメントを依頼している芸能事務所に有名人になってしまった梨果の学校の行き帰りを車での送迎をお願いしている。

「まぁ仕方ないのはわかってるんだけどね。自業自得だし。」

「ほとぼりが冷めるまで我慢だね。私としても梨果が心配だし。」

「うん。」

「学校での反応はどう？」

「あー、それがまた面白くてね。」

「面白い？」

「うん。そうだなー…例えば男の子が頻繁に“いつもお世話になってまーす”とかすれ違いざまに言ってきたりするんだけど…。」

「ええ？！それっていわゆるセクハラじゃない？」

「まあそうだね。でもそんな男の子たちも私で気持ち良くなってるんだなーと思うとなんか嬉しい。」

「はぁ…。」

「この間なんか男子たちが教室で“マカロン”の雑誌を広げて見ながらチラチラとこっちを見てたよ…。」

「あぁ…でもまぁクラスメイトの女子、しかも梨果レベルの美少女のあんなグラビアを見たら男子中学生はたまらんだろうね。教室にいる生の梨果と見比べたい気持ちは理解できるよ。」

後で聞いた話だが、梨果と美幸が出演した“マカロン”は30万部を超える売上を記録したらしい。男性向け雑誌とすれば異常だ。

「むしろ私がたまらなかったよ。嬉しくてその子たちに手を振ったりしちゃった。」

「ええっ！そんなことしたら男子は勘違いしちゃうよ？！」

「あーそうかもねーあははー。だけど変にツンケンしても余計面倒なことになりそうだし。」

「やれやれ…逆に女子の対応はどう？」

「うーん、たまに嫌がらせっぽいのはあるけどだいたいは協力的だよ。」

「そうなんだ…。」

「明日から長い夏休みだから明ける頃には落ち着くっしょ。」

「そうかなぁ…。」

何かと中学校も大変そうだ。学業に支障がでないと良いのだが…。