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第1章 再会

「社長には明日話しておきます」
「必要ないわ」
「え？」
「あの男、20年前に私を捨てた男なのよ」
「・・・・」
「あの男、私が妊娠したと知るや否や田舎に逃げ帰ったのよ。
私に何も言わずにね」
「・・・・」

「大学も嘘。二度とあいつと連絡が取れなかったわ」
「・・・・」
「その時の心労から来る流産で私は二度と子供が産めなくなったのよ」
「・・・」
「その寂しさから仕事に打ち込んで、一緒に滝本と二人で会社を大きくしてきたのよ！」
「はい」

「今更どのツラを下げて私に会いに来たのかと思えば
進出に協力しろ、ですって。笑っちゃうわね」
「・・・・」

「主人の手を煩わせるまでもないわ。黒田。あの規模の会社ぐらい
簡単に消せるわよね？」
「はい」
「再生できないほどに跡形もなくつぶしちゃって」
「はい」
「何も変わってなかったわ・・・腹がたつほど無神経な男」
「・・・・」

「手を抜かないでいいから。二度と立ち直れないほどにしてやって。
この瞬間からこの業界では1円だって稼がせないわ！」


バカなオトコ―――

タクシーの中で私は小さくほほ笑んだ。


ＥＮＤ＊＊＊＊＊