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3度目にして最愛
第2章 2度目は絶望を
3日の出張が2日と早めに切り上げられ、男と暮らす賃貸マンションのエントランスと玄関を鍵で解錠したある日、水城の視界に最初に飛び込んできたのは、自分が購入した覚えのないストラップ付きのパンプスだった。
続いて渡り廊下とリビングに繋がるドアの向こう側から、状況を理解出来ずに慌てふためく女の声と二人分の生活音を水城の鼓膜が拾い上げた。
立ち尽くしていると、身なりだけは整然と正した恋人が慌てて玄関口まで現れたが、その時にはリビングで身を潜めている女はきっと彼の愛人だろうと水城は理解に至った。
「夢物語をありがとう」
血の気の引いた男が何かを言い出す前に水城が別れを告げると、男は酷く怯えた表情で背を向けた水城の左手を掴み、縋った。
押さえつけても湧き出てくる性欲に結果的に勝てなかった男の後悔と懺悔の言葉は水城の心に何1つ響く事はなかった。
「ごめんね。私、許して全てを無かった事に出来る程、寛容じゃない。」
みっともなく縋り付く男の手を振り払い、2年の時を棒に振ったマンションを水城は後にした。