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そんな男性方
第3章 笑えねえよ
あいつはくそ不味い珈琲を淹れる天才だった
インスタントですら
豆がカップに浮いてんだぜ?
「ア、アメリカンとインプレッソどっちが良い?」
「……エスプレッソな」
「お、おう! 何をインするって話だよな!」
「笑えねえよ」
香りだけは確かだった
だが舌先に付いた瞬間から地獄
何回怒鳴ったことか
そんな日々が懐かしい
あいつとのシェアハウスから四年と半年
一個下だったから卒業も違った
何処に行ったかは知らねえ
ただ
たまに飲みたくなるんだ
あのくそ不味い珈琲を
張り切って汗を滲ませながらお湯を注ぐあいつを
思いきり怒鳴ってやりてえって
今更思うんだよな