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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~
第1章 人知れず咲く花
ただ、与えられた仕事や任務を自分なりに懸命にこなしてきた。それが、明香には精一杯だった。機転も利かない自分には、真心を込めて勤めることしかないと思ったせいもある。そうやって得た居場所をみすみす逃したくはなかった。
人知れず咲いて散る花、宮廷女官がよく喩えられる言葉だけれど、明香はそれでも良いと思う。まだしも咲く場所があるだけ良いではないか。折角根を下ろした場所から無惨に引き抜かれ、打ち捨てられてしまうよりは。