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犯罪特許
第1章 犯罪特許
 そして、時は流れて一年とちょい。

例によって男は頭も財布もカラッポ。稼いだ金はやはり悪銭身につかずか、ギャンブルと女と酒でタバコの煙のように嫌な匂いとおまけに不健康な身体だけを残して消え去った。


やはり頼れるのは母親である。
男は久しぶりに実家へと電話を掛けた。
「母ちゃん!俺だよ!お、、」
( いや、待て待て、、さすがにまずいよな)
「俺、、いや、、隆だよ!長坂隆!」
そう!改めて紹介しよう!この男の名前は長坂隆。
「はぁ?オレオレ詐欺お断り!」
「いや、、たがら、、隆、、」
ガチャン!と電話は切られた。
( ったく!ババァ! なんなんだよ!)
再び受話器を取る。
「あの、、お母さん?隆です、、息子の隆ですが、、」
「あんたもしつこいわねぇ!いい加減にしないと警察に連絡するよ!」
ガチャン!と電話は再び切られた。

、、、、

「クソッ!ババァめ!」
男は話が全く噛み合わない電話を諦め、ガス欠寸前の車を実家へと走らせた。
それにしても、、何の因果か、いや、完全なる因果応報なのだが、、昔なら電話一本で済む用件もわざわざこうして出向かなければならなくなった。
( ったく!なんて時代だ!)

しかし、、ここまで完全なる自業自得もまた珍しい。車は実家に到着した。
「あら!隆。わざわざこんな所までどうしたの?あっ!そういえば、、そろそろ私の誕生日だねぇ」
「た、誕生日、、」

(はぁ?そもそもお前の誕生日なんか知らねぇよ!というか、お、誕、生、日、だと!いつの間やら湧いて出て来た日なんか知るわきゃねぇっーつーの!この細菌ババァ!まさにアメーバァ!ウヒャ!
ついでにクイズだ!女王アリにあって働きアリにないものはなーんだ?それは「お誕生日」だぁ!!この自惚れアリンコアメーバァ!クソババァ!踏み潰すぞ!いや!靴が汚れる!名もなきホームレスに踏み潰されろ!)

(いや、待て待て、、)

「いや、、」
バカ息子の態度にそれは母親だけにピンと来た。
「で、何!何なの!」
「ごめん、、母ちゃん、、金貸して、、」
「はぁ?もうアンタに貸す金なんて一銭もないよ!この親不孝の極道息子が!帰れ!」

(ん?)
その時、男の脳裏に再びあるアイデアが閃いた。
( ん?金がない、、か、、)
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