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地獄視
第1章 恋愛下手
じゃあお初ってやつじゃん。
こーれ。食べてみて。
慶子は自分のスイーツをスプーンですくって桐生の口元に
運んだ。
慶子は自分自身でも不思議に思っていた。
彼とはこんなに普通に接する事は出来ない。
何だか緊張するし。
この人とは何でこんなに素の自分を出せるのか。

んで?あんたは何であの辺にいたんだよ。
ああ、そういや彼氏に連絡しとかないと。
あなたのせいで忘れてたわ。
彼氏とかいんのかよ。
まあね…一応。
慶子は事情を説明して日時をずらしてもらった。
いいのか?彼氏は
え?いいのよ。別にね。
何だよ。うまくいってねーのか?
いや、そういうわけじゃないんだけどね…
まあ他人の話しなんて興味ねーし。
桐生はじっと慶子を見つめた。
な、な、何よ?
いや、別に。
あんたもいろいろ苦労してんだぁ…ってね。
まぁね。人並みにね。
で?
何が?
スイーツよ!スイーツ。
初スイーツのお味は?
まあまあでねえの?嫌いじゃねえな。
てか、ランチじゃねえのか。
俺、腹減ってんだよな。
何だかアンタに振り回されて気が抜けた感じだよ。
良かった…
何がだよ。
あなたが笑ってくれて。
俺が?笑ってたか?
笑ってたわよ。ふふ…
良い顔じゃない。
人間笑顔だと幸せを呼び込むって言うわよ。
そんなもんかね。
…と桐生は慶子の唇についたクリームを拭うと
自分の口に運んで舐めた。
ドキッ!慶子は胸がキュンとした。
なんなの。このトキメキは。
ところで、あんたさっき俺に
「あなたは素晴らしい純粋な人間のはず。」とか言ってたな。
何で初対面のアンタに俺の事が分かるんだよ。
慶子はさっきまで束ねていた髪を直すように手ぐしをして
髪を溶かしながら、「いや別に…」
あなたに死神が憑いてないから…なんて言えるわけない。
あなたを止めるのに必死だったのよ。
悪い?
慶子は心のトキメキを見透かされないようにすることに必死だった。
今日はこの後仕事が入っててね。そろそろいかないと。
嘘だったが、この場から離れたかった。
もう大丈夫そうね。
ああ。いろいろありがとうな。
…うん。
ほれ。出しな。
な…な…何を?
LINEだよ!LINE!
このままさよならじゃね〜だろな。
俺を引き留めといてよ。
ああ、ラ…LINEね。仕方ないわね。
責任あるしね。
またいつでも連絡してきて。
あんた…可愛いな。
じゃあな〜
なんなのよ。
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