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想い人
第3章 それぞれの想い人
「やめろよ!」

疑い始めたら全部が疑わしく思えてくる。
泣きそうになっていた私を現実に引き戻してくれる大きな声。

「航先輩?」

航先輩は私を引き寄せると、作原さんの携帯をパシッと弾く。

「なっ……私たちは事実を……」

「そうよっ、高梨さんが傷つくのが可哀想だから……」

言い訳を始める2人を睨む航先輩。
2人はモゴモゴと不服そうに何か言いながら、立ち去った。


「美空、ホテルの前にいただけで、行ったとは限らないんだぞ? ちゃんと透也本人に聞け」
優しい瞳で私を覗き込む航先輩。

「うん……」
小さな声で頷く。


”蕾さんとっ…エッチ……した…?”

昨晩を思い出す。

あの時、ピタッと透也の動きが止まった。

不安に駆られて振り向こうとした私の身体を、透也はキツくキツく抱きしめて振り向かせないようにした。

”……してないよ…。美空としかしない…”

その言葉に舞い上がってしまった私は、それ以上は聞かなかった。

でも、透也はあの時どんな顔してた?

何を……誰を想っていたの……?


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