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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第3章  春の夢 其の参
 この女は完全に清七を自分の世界から切り離そうとしている。否、出逢ったそのときから、この女の心に清七の居場所はかけらほどもなかった。そのことは共に過ごした夜から半月後、料亭〝みやこ〟から信濃屋と出てきたお須万と再会したあの日、既に判り切っていたことではないか。
 あの時、お須万は確かに清七を無視したのだ。端から眼にも入らぬもののように清七を扱い、彼女の住む世界にはいない者としてふるまった。
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