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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
この界隈を通りかかると、いやでも三年前の哀しい出来事を思い出す。この辺りは昼間でも滅多と人通りがなく、このような夜更けともなれば、尚更、人影どころか犬の仔一匹見当たらない。
和泉橋と呼ばれる小さな橋の上手が老中松平越中守を初めとする名だたる旗本や大名の屋敷が立ち並んでいる和泉橋町、閑静な武家屋敷町である。対する下手は町人町と呼ばれ、その名のごとく、錚々たる大店が軒を連ね、大通りをあまたの人々が行き交う活気溢れる商人の町であった。
和泉橋と呼ばれる小さな橋の上手が老中松平越中守を初めとする名だたる旗本や大名の屋敷が立ち並んでいる和泉橋町、閑静な武家屋敷町である。対する下手は町人町と呼ばれ、その名のごとく、錚々たる大店が軒を連ね、大通りをあまたの人々が行き交う活気溢れる商人の町であった。