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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
男と異なり、女は子をその胎内に宿したと知った日から、十月もの間、己れの身の内で育んで、更に生みの苦しみを経て漸く母となる。そこまでして生んだ我が子を、眼の前で殺されたおみのの心の内はいかばかりであったことか。
恐らく、太助が死んだ時、おみのの心も共に死んでしまったに相違ない。自分では、おみのをこの現世(うつしよ)に引き止めることはできなかったのだ。あのときは、己れの無力をもさんざん思い知ることになった。
恐らく、太助が死んだ時、おみのの心も共に死んでしまったに相違ない。自分では、おみのをこの現世(うつしよ)に引き止めることはできなかったのだ。あのときは、己れの無力をもさんざん思い知ることになった。