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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第4章 春の夢 其の四
あの瞬間、お須万は清七を亡くした良人だと信じ込んでいた。ゆえに、けして清七という人間を見ていたわけではなかったのだけれど。それでも信頼に溢れた一途なまなざしで清七を見上げ、縋りついてきた女を、清七は心底から愛しいと思ったのだ。あの瞬間を、お須万と出逢った運命をけして後悔はしない。
清七は、しばらく小さな娘と見つめ合った。それは、時間にしてはほんのわずかなものだったろう。だが、清七には途方もなく長く思えた至福のひとときになった。
清七は、しばらく小さな娘と見つめ合った。それは、時間にしてはほんのわずかなものだったろう。だが、清七には途方もなく長く思えた至福のひとときになった。