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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
 お民は心の中で独りごちながら、指を折る。
―そうか、もう、十一になるのだねぇ。
 お民は淡く微笑し、そっと吐息を洩らす。
 お民が兵助と所帯を持ったのは、今から十二年前のことになる。兵助は腕の良い大工で、二人の間を取り持ったのは兵助が世話になっている棟梁だった。言わば、見合い婚ではあったものの、二人は仲も睦まじく、一年後には長男に恵まれている。
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