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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第5章 二つめの恋花 恋紫陽花 其の壱
 五月に入って、陽が暮れるのも随分と遅くなった。日中はもう夏と言っても良いほどの陽気で、少し動いただけで汗ばむ。殊にお民のような肉付きの良い者は、じっとしていても、じっとりと汗が滲んできてしまう。
―それにしても、どうして、うちの人はああも痩せているのかねえ。
 お民はできるたけ滋養のつく献立を考えてはいるのだが、元々痩せている質なのか、兵助は所帯を持った頃から小食なのは確かであった。お民の食べる量の半分そこらがやっとというところだ。
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