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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
女は本当に心底嬉しげな顔で清七を見ていたのだ。親を一途に信じる子どものような信頼に満ちた眼で、童女のようなあどけない微笑みを浮かべて清七だけを見つめていた。
「―抱いて」
女が清七の胸に顔を埋(うず)めたまま口にしたひと言を、清七は夢見心地で聞いた。
―抱いて欲しいって、物欲しげな眼で俺を見てさ、縋るように自分から頼んできたんだぜ。
また、あの長身の男の言葉が耳奥で響いた。
もう一人の冷静な自分がしきりに警告している。
「―抱いて」
女が清七の胸に顔を埋(うず)めたまま口にしたひと言を、清七は夢見心地で聞いた。
―抱いて欲しいって、物欲しげな眼で俺を見てさ、縋るように自分から頼んできたんだぜ。
また、あの長身の男の言葉が耳奥で響いた。
もう一人の冷静な自分がしきりに警告している。