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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
おれんは今、俺に確かにこう言ったのだ。彼女がこれまでの人生の中で一度も出逢わなかった心を持った男、それがこの俺だと―。
そのひと言は、弥助の心を見事なまでに射貫いた。
弥助はともすれば震えそうになる己れの指をそっとおれんの細い指に絡める。女の手を握ったのは初めてというわけでもないのに、心が、震えた。視線と視線がぶつかった時、弥助はおれんの瞳の中に自分への無限の信頼をかいま見たような気がした。