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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第8章 三つめの恋花 桜いかだ 其の壱
結局、おれんに見送られて〝花のれん〟を出たのは夜もかなり更けた頃のことになった。おれんが〝お嬢さんと召し上がって〟と持たせてくれた金平を小脇に抱えながら、はて、こんな時刻まで、どこで何をしていたのかということを娘に何と説明しようかと思い悩む。
良い歳をした大の三十三の男が、十二の娘に午前さまの言い訳でもなかろうにと自分でも呆れるが、口で何と言おうと、弥助はこの一人娘を掌中の玉と愛でているのだ。