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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐 
 弥助は門前道から続く長くて急な石段をゆっくりと昇ってゆく。この石段は年寄りや女子どもは途中で何度も休みながら上らねばならぬため、〝息継坂〟と呼ばれている。
 その息継坂を昇り切った先には山門があり、開祖の浄徳大和尚自らが書いたという額〝浄土在是〟(浄土これに在り)が掛かっている。
 山門をくぐり、まずは最初に本堂、三重ノ塔を横眼に見つつ、通り過ぎる。更にこぢんまりとした御堂―絵馬堂の傍を過ぎると、最奥部の奥ノ院が見えてくる。
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