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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐
「こんなことをするくらいなら、どうして来て下さらなかったの? あたしは―ずっと弥助さんを待っていたんですよ。あの若旦那の藤次郎さんがあんまりしつこいから、今年も残り少なくなったし、もうこれで年内は店を閉めようと思ったんです。でも、店を閉めてしまえば、弥助さんが折角おいでになっても、そのまま帰っちまうから、それもできませんでした。あたしは、ずっとずっと弥助さんに逢いたいと思っていたのに! 当の弥助さんは、あたしのことなんか少しも思い出しもしちゃ下さらなかったんでしょう」