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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第9章 桜いかだ 其の弐
「ああ、美しい空と書く。俺は無学で、平仮名ですらからきし駄目だが、同じ長屋に住む浪人者が学のある人で、その人が名付け親になってくれたんだ。空はすべてのものを遍くその懐に抱(いだ)く優しさを持っている。だから、その空のように、あらゆる人を包み込めるような人間になれと、そういう意味合いがあるのだと教えてくれた。娘はどういうわけか女のくせに学問好きで、その浪人先生が近所の子を集めてやってる寺子屋にいそいそと通ってるよ。