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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第2章  春の夢 其の弐
 清七などはせいぜいが〝いっぷく〟のような一膳飯屋の常連になるのが良いところだ。
 その自分とは一生縁遠い高級料亭を清七はボウとしたまなざしで見つめていた。幾ら一生懸命あくせく働いてみても、金は一向にたまらず、暮らしは何も変わらない。
―どうしてなんだ、どうして俺にはちっとも良いことがないんだ。
 近頃、清七はつくづく思わずにはいられない。
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