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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第1章 一つめの恋花 春の夢 其の壱
―おみの、太助。
 清七は心の中で亡くした女房と伜の名をそっと呼ぶ。その拍子に、おみのの左眼の下に小さな泣きぼくろのある愛らしい顔、生まれてまもない太助の無心な笑顔が瞼に鮮やかに甦った。
―忘れられるわけがねえ、忘れられるはずがねえじゃないか。
 思わず熱いものが込み上げてきて、清七は大きな手のひらで両の眼をゴシゴシとこする。
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