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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
 むろんのこと、月は雲に閉ざされ、その姿を隠していた。
 その時。立ち込めていた灰色の雲がわずかに動き、わずかな割れ目から、かすかにひとすじの光が差し込んだ。
 それを合図とするかのように、空を閉ざしていた雲が流れ、ほんの束の間、月が再び現れる。
 ふと、頭上の月が弥助の眼に入った。円い月が紅く染まっている。それは一日の終わりを告げ、最後の輝きを見せる日没の太陽にも似て、よく熟れた柿のような色だった。
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