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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
 その一部始終を、弥助は息を呑んで見つめていた。中から現れたのは、簪(かんざし)であった。木蓮の花を象った、品の良い細工だ。花の上には今にも飛び立とうとする蝶が乗っている。
 しばらく、おれんからは何の反応もなく、ただ、その手のひらに乗せた簪を見つめているだけだった。
「気に入ってくれたかな?」
 恐る恐る訊ねるさまは、まるで弟子が師匠に出来具合を訊いているようだ。
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