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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
 自分を壊れそうなほど強く抱いたあの腕が動くこともなく、おれんを真っすぐに見つめていたあの力強い瞳が最早何も映さなくなってしまったことを。
 おれんは瞳に絶望を宿したまま、先へ手を伸べる。
「―弥助さん」
 そう囁いた自分の声があまりに虚ろで、おれんはゾッとした。
―おれん。
 弥助の声が耳奥で甦る。彼の名を思い出しただけで、涙が零れ落ちそうになる。
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