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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
少女に寄り添っているのは、おれんに弥助の死を知らせてくれたお民という女だった。
岡っ引きがわずかに筵をめくり、死人の顔を少女に見せて何か言っている。恐らく、念のために弥助本人であるかどうかを確認しているのだろう。
刹那、少女が悲鳴を上げて筵にくるまれた骸に取り縋った。
おれんには、その十一、二歳の少女がそも誰であるかすぐに判った。弥助の娘美空である。弥助があれほど愛し、誇りに思っていた一人娘であった。