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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
 いかほど歩いたのだろう。もしかしたら、千汐が考えているよりは長かったのかもしれないし、短かったのかもしれない。千汐はつと顔を上げ、周囲を見回した。
 見憶えのある風景もこうして純白の化粧を通して見ると、いつもとはまるで違って見える。満々と水を湛えて流れる川の面に、音もなく吸い込まれて消えてゆく雪、また雪。
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