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第11章 四つめの恋花　山茶花～さざんか～　其の壱

　母親は商いのこともろくに知らず、ただ毎日を芝居見物だ、新しい晴れ着を新調するだなどと面白おかしく暮らすことしか頭にないような女であった。そのことを父が知っていたのかどうかは知らぬが、母のお登勢は、手代頭の伊之助という若い男ととかくの噂があった。たった一人の娘の千汐のことも乳母に任せきりで、我が手に抱いたこともないような女だった。