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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
よく、困ったときには自分でも信じられぬほどの力が出るという。火事場の馬鹿力というのか、そのときの千汐もそうだった。
千汐はなりふり構わず、髪を振り乱し、男の頭を幾度も殴打した。
それが因で、見世の若い衆(用心棒)から酷い折檻を受けた挙げ句、切見世に鞍替えさせられた。切見世というのは吉原でも最下級の女郎屋で、羅生門河岸と呼ばれる界隈にある。文字どおり、一つの建物を幾つにも仕切った狭い部屋で客を取るのだ。
千汐はなりふり構わず、髪を振り乱し、男の頭を幾度も殴打した。
それが因で、見世の若い衆(用心棒)から酷い折檻を受けた挙げ句、切見世に鞍替えさせられた。切見世というのは吉原でも最下級の女郎屋で、羅生門河岸と呼ばれる界隈にある。文字どおり、一つの建物を幾つにも仕切った狭い部屋で客を取るのだ。