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第11章 四つめの恋花　山茶花～さざんか～　其の壱

　らいは、己れだけでなく、接触した者、身近にいる者にも感染する。多分、千汐自身、客の誰かから移されたものに違いなかったけれど、それがいつ頃のことで、相手がどんな男だったのか、千汐が思い出せるはずもなかった。当然のことながら、千汐は切見世から追い出され、吉原を出ることになった。
　年季が明ける前に、晴れて吉原から出られる女は滅多といない。が、千汐は病、しかも助かる見込みのない業病を抱えたがゆえに出ることになったのだ。