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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 だから、客の方も女郎の言葉に真など求めはしないし、女の方も男の優しさがその場限りのおざなりなものだと判っている。判っていて、わざと知らぬふりをして一夜だけの甘い夢を見るのだ。それが、廓の常識だった。
「私は信じるよ。お前の話には嘘はねえ」
 男が真摯な声音で言った。
 千汐は男の瞳のあまりの曇りのなさに狼狽え、一瞬、視線を揺らす。
「へえ、じゃあ、これでも、まだ、あたしを信じられる?」
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