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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
だが、曽太郞は一向に現れない。夜毎、橋のたもとに佇む千汐に声をかけてくるのは、待ち人とは似ても似つかぬ酔っぱらいか、ただ千汐の身体だけを目当てにするような、これまでの客と同じ類の男たちばかりだった。
「姐(ねえ)さん。何だか人待ち顔だね」
その日声をかけてきたのは、三十そこそこの職人風の男だった。屈強な身体つき、赤銅色の膚は職人というよりは人足や力仕事を生業とするようにも見えるけれど、男は自ら下駄を作る職人だと名乗った。
「姐(ねえ)さん。何だか人待ち顔だね」
その日声をかけてきたのは、三十そこそこの職人風の男だった。屈強な身体つき、赤銅色の膚は職人というよりは人足や力仕事を生業とするようにも見えるけれど、男は自ら下駄を作る職人だと名乗った。