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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第2章  春の夢 其の弐
―おい、待てよ。行かねえでくれ。折角逢えたのに、そのつれない態度はないだろう?
 そう言いかけて伸ばした指先は、空しく宙をかき、力を失って落ちた。清七の前を、お須万はまるで路傍の石ころの傍を通り過ぎるように、すっと通り過ぎていったのだ。
 それは、お須万が清七と係わり合うのを避けているというよりは、己れの視界から清七という存在そのものを完全に抹殺し、端から、眼に入らぬものとして扱おうと考えているかのようでもあった。
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