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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
 苦界の水に染まってからというもの、随分と嘘をつくのが上手くなった。
―本当にあの男は、こんなあたしで良いのかしら。
 ちらりと、そんな想いがよぎる。
 が、下駄職人だという男は、千汐の心を読んだように口の端を歪めた。
 本人は笑ったつもりだろうが、皮肉げに歪められた口許は到底笑ったようには見えない。なまじ男ぶりも良いだけに、かえって陰惨さが際立つ。
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