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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参
初めは咳と鼻水といった典型的な風邪の症状だったため、たまに引く風邪だと楽観視していたのだが、二日ほどして高熱を発し、枕も上がらぬ体になった。高い熱は七日続き、曽太郞は生死の淵をさまよった。熱で朦朧としながらも、曽太郞はただ一人の女の面影だけを追い求めていたのだ。
千汐が微笑んでいた。
薄紅色の花びらが雪のように降る中、千汐が優しげに微笑んでいる。そんな夢を幾度も見た。
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