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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参 
 千汐はまだ赤児が生後ひと月にも満たぬ時分から、働き始めた。しかし、まもなく苛酷な現実に直面することになった。
 子どもと二人だけの暮らしでは、一膳飯屋の仲居の収入だけではやってゆけないのだ。
 それでも、子どもがまだ赤児のうちは良かった。真平(しんぺい)と名付けた子どもが三つになった頃、千汐は四年も勤めた飯屋から暇を取った。
 真平はまだ漸く四歳だが、父親に似たのか、同年齢の子どもよりも上背がある。食欲も旺盛で、食費もばかにはならなかった。
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