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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参
安堵の想いが胸の内でひろがる。
「ヘン、すかしやがってよ。あいつの情人(いろ)がこれまだふるいつきたくなるような良い女なんだ。深川の芸者上がりで、もう数年も前から夫婦(めおと)同然に暮らしてらあ。そうか、これから帰って、あの色っぽい女としっぽりやるのか」
正次は心底羨ましげに言い、千汐の手を掴む。霜月もそろそろ終わりのこの時期に、男の手はねっとりと汗ばんでいる。
千汐の膚がゾワリと粟立った。