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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参 
 夜鷹の中には、自分の住まいに男を引っ張り込む者も多い。が、家には真平がいる。いかにしても、子どもの待つ家にこの男を連れてゆくわけにはゆかなかった。
 こんな時、千汐はよく随明寺門前道の出合茶屋を使った。随明寺はここからもほど近い。
 千汐は男の汗ばんだ手をおぞましさに耐えながら、軽く握った。美しい花が虫を誘うように、無言で男の手を引っ張る。
 それですべては決まりだ。正次は惚けたように、やに下がった顔で千汐の手を力を込めて握り返してきた。
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