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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第13章 山茶花~さざんか~ 其の参
そう思うことが、今の千汐を生かしていた。
二年前、一膳飯屋の仕事を辞めてからの苛酷な暮らしがたたり、一時は止まっていたかに見えた病気が急速に進行してしまった。
病の再発に気付いたのは、今年になって早々のことである。まだ松ノ内も取れぬ、江戸市中が正月気分で華やいでいる時季のことだった。
ある朝、少しでも正月気分を味合わせてやろうと焼いた餅に醤油をつけながら、真平と二人で食べていたときのことだ。