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こころから
第53章 久美子27
 わかってた。
わかってたけど無理だ。
あんなに情熱的に、
あんなに誠実に、
他の何もいらないという目をしながら、
魂ごとぶつかってくるみたいに全身全霊で愛してくれたら、
本気にならないなんて無理。

「まあ、それは建前。あんたの気持ち、わかる」

 さおりがベッドに腰掛ける。

「今はすごくつらいだろうけどね。私から見たら、少し羨ましい」

 さおりの横顔はきつねっぽい。
妙に色気があって、昔から男女問わずによくもてていた。

「亡くなられた子は気の毒だけど」

 言葉が途切れる。
直人くんの冥福を祈ってくれているよう。
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