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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「今日もお休みしたんですか?」
 僕は、中学校の授業を終え、いつもの様にLINEを入れ、一度帰宅をしてから葵さん宅に来宅をする。

「うん…なんかさぁ、もう行きたくなくなっちゃったのよね」


 実は葵さんは…

 あの痴漢行為をされた次の日はお休みをし…

 その次の日からは父親に相談をしたらしく、父親の会社の人だろう…に自動車での送迎によって高校に再び通い始めたのだが…

 それも約一週間くらいで…

 高校に通うのを止めてしまったのであった。

『ほら、もう7月になるからさ、早めの夏休みという事でさぁ…』
 と、僕にはそう言ってきたんだけど…
 どうやら、あの痴漢行為により、全部が嫌になってしまったみたいなんだ。

 いや違うかも…

 全部ではなく、男という、大人の男という存在が…
 
 どうやら嫌に、トラウマになってしまったみたいなんだ。

 それでも僕は変わらないペースで、いや、ほぼ毎日、そして週末は泊まりで…
 葵さん宅に、葵さんに逢いに行き、勉強をし、愛し合うという日常を続けていたのだが…


「もうね…
 父親以外の男、いや、大人の男が嫌、イヤになっちゃったみたいで…」

 どうやら高校でも、男子は既に大人に近い成長をしていたし…
 葵さんを気に入っている数人の男子高校生がアピールしてくるのも…

「全部イヤ…なの」
 と、打ち明けてくれた。

「本当の、ホントに、駿だけになっちゃったみたいなの…」
 僕にだけは違和感、嫌悪感は勿論全く無く、いや、僕だけしかダメなんだと言ってきたのだ。

「あ、あとは女の子、女性はとりあえず平気よ…」
 だから…
 高校にはあれから行ってはいない。

「それにさぁ、もう少しで夏休みだしねぇ…」
 確かに、もう7月中旬になるから…
 あと約一週間で夏休みになる。

 そう言いながら葵さんは、また、以前の様に自宅でピアノを弾き、僕の中学校からの帰りを待つという…
 以前の様な毎日に逆戻りをした。

 だが…

 そのピアノは『エリーゼのために』の様な、どちらかというとアップテンポな曲ではなく…
 最近のお気に入りの様な
『G線上のアリア』みたいな、穏やかで、緩やかな、優しい曲ばかりではあったから、日々の心は落ち着いているモノと思われる。


 それに…





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