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担当とハプバーで
第2章 危険な好奇心

 下半身がムズムズとする。
 目が合って、胸のサイズや夜の悩みを打ち明けて、獣のような視線に変わった相手に、女の性を取り戻す。
 危険性だっていっぱいあるはず。
 店員がマナーの悪い客は追い出すと書いてあるけれど、望まぬプレイまでは止められないんじゃないか。
 性病のリスクだって風俗より高い。
 検査してから遊びに来る人だけとは限らない。
 すごいな。
 別世界はたくさんある。
 鍵の開く音がする。
「ただいまあ」
 酔った祥里の声に、スマホの画面を切って布団に潜り込んだ。
 誰が出迎えてやるもんか。
 生活よりも飲み会を優先する男なんて。
「凛音、寝ちゃった?」
 扉越しに聞こえるふにゃついた声。
 頼りない足音が浴室に向かう。
 何度か帰宅した祥里に迫ったこともあった。
 疲れてる、の一言で一蹴された。
 そりゃそうよ。
 十五時間も外にいて。
 夜の体力が余ってるわけがない。
 でも記憶は残ってる。
 仕事終わりに熱く抱かれた夜。
 生きる意味はキミだ、と囁かれた夜。
 出社前に激しく盛り上がった朝もあった。
 全部この家で起きたことなのになあ。
 時間は全てを流していってしまう。
 もう一度画面をつけて、プログを読む。
 入店時の本人確認に、男女であまりに異なる料金システム。
 ハイリスクなのは女性の方だものね。
 その料金は納得がいく。
 風俗よりは安いから、男性も来るのかな。
 それとも経験人数を増やしたいのかな。
 浮気よりはマシだからかな。
 利用する人の心情なんて予想もつかない。
 でもなんだか、魅力的に見えてしまう。
 駆け引きの会話、スキンシップ、キス、服を脱ぐ、そんなパターンじみたやりとりが今ではとても羨ましいから。
 寝間着から始まるなんて、味気ない。
 化粧をして着飾った上で、互いの気持ちの揺れに身を任せて楽しみたい。
 まるでそこには自分が失った大切なものがあるように思えてしまう。
 ふと我に返ってスマホをベッド脇のサイドテーブルに置いた。
 充電器を挿してから、布団をかぶり直す。
 だめだめ。
 新宿に行ったからだ。
 ハプニングバーもそこにあると知って高揚してしまってる。
 ないない。
 良いことしか書いてない体験談のせい。
 クチコミにはきっと悪いこともたくさん寄せられているはず。
 早く忘れよう。
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